最低賃金が上がるたびに、給与制度が苦しくなる会社の話

毎年この時期になると、最低賃金改定の話題が増えてきます。

対象となる従業員の時給を確認し、最低賃金を下回らないよう時給を見直す。

会社にとって必要な対応ですし、当然行わなければなりません。

ところが給与計算をしている立場からすると、最低賃金改定は単純な時給変更だけでは終わらないことが少なくありません。

むしろ、本当に大変なのはその後です。


例えば、4月に定期昇給を行っている会社。

勤務成績や勤続年数を考慮して時給を上げました。

従業員も、

「頑張った分だけ評価された」

と感じているはずです。

ところが半年後。

最低賃金の改定により、最低賃金付近で働いている従業員の時給を再び引き上げる必要が出てきます。

するとどうなるでしょうか。

1年の中で、2回時給が上がる人が出てきます。


ここからが本当の悩みです。

最低賃金の影響を受ける従業員の時給は大きく上がる。

一方で、少し上の時給帯にいるベテラン従業員は変更なし。

すると、それまであった時給差が縮まります。

場合によっては、

「新人とほとんど変わらない」

という状況になることもあります。


もちろんベテラン従業員からすれば複雑です。

長年勤務している。

仕事も任されている。

新人指導もしている。

責任も増えている。

それなのに気が付けば、最低賃金改定によって時給差がほとんどなくなっている。

不満を感じても無理はありません。


ではベテラン従業員の時給も上げれば解決するのでしょうか。

そう簡単な話でもありません。

ベテランを上げれば、その上の時給帯とのバランスも気になります。

さらに上を上げれば、そのまた上も調整したくなります。

結果として、

最低賃金への対応だったはずが、会社全体の賃金体系の見直しへ発展することがあります。


近年は最低賃金の引上げ幅も大きくなっています。

そのため、最低賃金付近で雇用している会社ほど影響を受けやすくなっています。

毎年のように賃金テーブルを見直し、

毎年のように人件費の試算を行い、

毎年のように社内バランスに悩む。

そんな会社も少なくありません。


給与計算をしていると、こんなことを思う時があります。

最低賃金への対応が大変なのではありません。

本当に大変なのは、

最低賃金が上がるたびに追われる給与制度

の方です。


給与制度は、本来であれば従業員の成長や経験が適切に反映されるものであるべきです。

しかし最低賃金改定のたびに調整を繰り返し、

その場その場の対応を積み重ねていくと、

いつの間にか制度全体のバランスが崩れていくことがあります。


最低賃金への対応は避けられません。

ですが、そのたびに慌てて見直しを繰り返しているのであれば、一度立ち止まって考える時期かもしれません。

問題は最低賃金ではありません。

もしかすると、

毎年の最低賃金改定に耐えられない給与制度そのもの

に原因があるのかもしれません。